もうひとつのハチイチ全日本選手権

FILE 31〜1/2Final A レポート

それまで16秒中盤で走行していたトシゾー店長のペースが、コンマ2秒ほど落ちてきた。ハイペースを続けられなくなったのか?いや、そんなはずはない。グランド・ファイナル進出が見えてきたから、車やエンジンを温存するためのペースダウンか?いや、それも違う。

「いったいどうしたんだ!?」

ずっとトシゾー店長の車を追ってきた私もTSURUちゃんも、ペースダウンした意図がわからなかった。トップに立った佐橋選手との差は次第に開いていく。後続との差はどうだ?ピットエリア内に設置されたモニターを見ながら、正確なラップタイムと後ろとの差を確認するTSURUちゃん。前半の貯金がものを言い、今のペースを維持できれば、最終ラップまで2位をキープできる。トシゾー店長に後続とのタイム差を伝えるまでもなかったのだ。

そして迎えた3回目の給油。佐橋選手は更に速い給油を行い、いち早くピットアウト。私も完璧な給油を行い、ピットクルーとしての責任を果たし、トシゾー店長をコースへと送り出す。あとは5分間、トシゾー店長の最後の踏ん張りを見届けるだけだ!

トシゾー店長のラップタイムは、16秒後半まで落ちてきた。しかし他の選手もやはりペースは落ちてきている。おそらくタイヤ径が各車とも小さくなってるはずだ。5分間で2mmは減ると思われたタイヤ径は、15分を過ぎた時点は6mmは減っていることになる。エンジンに負担をかけないよう、細心の注意を払いながら、周回を重ねていくトシゾー店長。

給油を行う5分間ごとが、ものすごく短く感じた私であったが、最後の給油を終えてからの5分間は、ものすごく長く感じていた。

「TSURUちゃん、今、何分?あと何分?」

18分経過!ラップタイムは16秒80!」。ストップウオッチを持つTSURUちゃんの手は、汗でびっしょりになっていたに違いない。

残り時間は2分を切った。ペースダウンしてはいるものの、NEXT/R&Dエンジンは、快調に回っている。ACTIVEのタイヤは、しっかりと路面を捉え、車を前へ!前へ!と押し出している。Fspecのボスの手による鮮やかなボディは、太陽の光に照らされて、さらに輝きを増している。関係者全ての願いであるグランドファイナル進出、そして悲願の初優勝に向けて、ゴール目指して走り続けるトシゾー店長!

「19分経過!残り1分!」「おっしゃぁ!がんばれぃ!トシゾー店長!」

トップを走る佐橋選手には届かないとしても、3位以下の選手との差は十分開いている。ここまでくれば、もうグランドファイナル進出は確定だ!そう思っていたのは、私だけではないはず。隣で真剣な眼差しで車を追うTSURUちゃんも、パドックで戦況を見つめるチーム九州男児のみんなも、そして大勢のギャラリーたちも確信していたはずだ!

瞬きもせずに、祈るような思いで見つめる私たちの前を疾風のごとく駆け抜けるトシゾー店長のVECTOR-NT。1コーナーを抜け、左のインフィールド、そしてショートストレートをクリアし、ヘアピン、そしてバックストレートへと立ちあがっていく!

しかし、次の瞬間!


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