予選が始まると、一気にサーキット全体に、そしてピットエリアにも緊張感が増してくる。ピットクルーである私は、ゆっくり食事をする時間などないと割り切っていたので、栄養ドリンク2本、そして10秒チャージ2時間キープを3つ、Yellow
Cornのウエストバッグに忍ばせ、選手たちと一緒にピットエリアで戦った。
昨日、一人で立てた作戦を実行するために、頼みのSEIさんはまだサーキットに到着していない。電話で聞いたところ、事故渋滞で大幅に遅れそうだということだった。
頭で考えるのと、実際にやるのとでは大違い。あっという間にコースオープンとなって、あっという間に計測が始まり、次のヒートの選手が車を持ってくるので、あらかじめ電源コネクタを半分だけ差し込んでいて!と指示していたら、あっという間に5分が経過して、車がピットに戻ってくる。
エンジンを止めて、電源コネクターを抜き、車をテーブルの下に置いて、次の車のエンジンを始動し、ドライバーに確認してピットレーンに車を出す。
ひたすら、その繰り返し。周到に準備したはずだった、Palm Vxに保存した目標到達LAPを見る余裕など全くない。右手に持ったロビトニックのストップウオッチでラップを計りながら、コースを走る選手の車を追い、コース上で障害になる停止車両がないか、確認するだけで精一杯だった。
そして私同様に、いや、それ以上に真剣に選手のサポートのため、ピットエリア内にいたNEXTの土井さんの姿があった。ウオーミングアップ走行中のエンジンの様子を見極め、ピットインした際にドライバーとコミュニケーションを取りながら、正確にニードル調整し、コースに復帰させる土井さん。コントロールタワー上も、ピットエリアもまさに戦場と化していたのだ。
そんなこんなで、予選中の九州勢の走りは、誰がどうだったか、申し訳ないがうろ覚え程度しか頭に残っていないのだ・・・。それでも今年の九州勢の走りは違っていた。少しでも前に出る!ひとつでも上の順位を狙うんだ!という気迫がピットにいる私にも感じられていた。
もちろん、納得いく走りができない選手もいたわけで、本当だったらピットクルーとして次の予選までにドライバーの気持ちを汲んであげ、励ましたり、叱ったり、メンタルな面のサポートもしてあげたかったのだけど、そんなことできる状況ではなく、そうした気持ちの切り替えは選手個人に任せるしかなかったのだ・・・。
実力的に過去最高とも言える、今年の九州選抜メンバー。誰が上位を走ってもおかしくない顔ぶれであったが、やはり選手権というプレッシャーに耐え切れず、またその雰囲気に呑まれてしまっている選手もいた。それは全員に言えることなのだけど、選手権で重要なのは、絶対に負けないという強い精神力と限りないプラス思考、そしてすばやい気持ちの切り替えができる選手でなければ、上位に進出することができないのだ!
もちろんドライビングテクニックや、刻々と変化する路面状況に対応できるセッティング能力も必要なのだが、それ以上に気持ちの面で負けたら、その時点で負けは確定してしまう・・・。頭ではわかっていても、実際に選手権に来てみないと、いや、ドライバーとしてその場にいないとこればかりはわからないと思う。でも、負けるな!九州男児!
予選第1ラウンド途中で、SEIさんが到着!私が立てた作戦を遂行すべく、SEIさんにお願いする。でも、私だけでなく選手からもいろんなことを頼まれたSEIさん。「こうなったら自分一人でやるしかない!」。気持ちを切り替え、ピットエリアを出て、予選第1ラウンドに出撃するトシゾー店長のパドックへ向かったのであった・・・。
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