無事に車検が終わり、車を持ってパドックに帰る私。30分間の死闘を繰り広げたトシゾー店長は、椅子に体をあずけるかのように座り、タバコをふかしながら、遠くを見つめていた。
その視線の先には何があるのか?
そんなトシゾー店長に、「あんたなぁ〜!ファイナルに行くんでぇ!わかっちょんじゃろうな!?」と声をかける私。「・・・」。小さくうなずくも、無言のトシゾー店長だった。
そんなヤツの肩を2度、3度叩きながら、私はストップウオッチを持って、コース脇へと移動する。終わったことに対して、いつまでも考えていても仕方がない。これからスタートする1/2Aファイナルの行方を追うんだ。私が追う車は3番手を走る車。この車の成績如何で、トシゾー店長のファイナル進出が決まるのだ!「絶対にトシゾー店長はファイナルを走るんだ!そしてオレがファイナルのピットに立つんだ!二人で、いやチームJapanが世界を獲るんだ!」そう強く願いながら、レースの行方を見守る私。
私の隣にtamaさんがやってきた。日頃、腕時計をしないtamaさんだが、必要に迫られてNIKEの腕時計を買ったらしい。二人で注目する3番手の選手のタイムを計測する。
序盤から1位の車が抜け出し、それを2位、3位の選手が追う展開となった1/2Aファイナル。3番手の選手のタイムは、16秒後半から17秒前半といったところ。トシゾー店長のアベレージタイムよりも、若干遅い!
しかしスタートして5分過ぎあたりから、ペースは16秒中盤コンスタントとなる。やはり世界選手権のセミファイナルを走る選手、おまけに3番手を走る選手なんだから、当然と言えば、当然の走り。正確にラップを刻んでいく3番手選手。
「まだわからない。30分間のレースが終わるまでは、どうなるかわからない!ここでオレが『やっぱり無理かも知れない!ダメかもしれない』なんて思ったら、それこそダメになるんだ!」。最後の最後まで、トシゾー店長がファイナルを走ることだけを信じて、願って、手に汗しながらレースを見つめる。
そんなレース展開に動きがあったのは20分過ぎのこと。これまでミスのない走りをしてきた3番手の選手が、コントロールラインを通過するシケインでコースアウト!その焦りからか、アベレージタイムが16秒後半から17秒中盤のタイムまで落ちてしまう。その後も16秒中盤のタイムが出るも、タイムにばらつきが見えてきた!
「これは行ける!行けるぜ!」
そのことをトシゾー店長に伝えようと、パドックに戻ると、既にトシゾー店長はファイナルに向けて車の調整を始めていた。それもそのはず、パドック内にはモニターが備え付けられ、リアルタイムにレースの模様が映し出されていたのだ!
「ファイナル行けるぜ!トシゾー店長!」と裏返った声で話しかけるも、トシゾー店長の表情は硬い。オレがあんまり浮かれすぎても、いけないと思うも、これが浮かれずにいられようか!
残り時間3分となった。この時点で3番手選手が15秒台のタイムで走ろうとも、トシゾー店長の周回数を超えることはできない!この時点でトシゾー店長のファイナル進出が確定したのだ!
正式にファイナル進出がトシゾー店長に告げられたのは、1/2Aファイナルが終了した後であるが、それを境に、トシゾー店長の周りには大勢の関係者が詰めかけるようになる。まずもって、1/2Bファイナルで最後の最後まで争った1/2Bファイナルの5番手選手ほか、ファイナルに残れなかった各国の選手たちが「オレタチノブンマデ、ガンバッテクレ」と激励にくる。そして地元のラジオ局のインタビューや、各国のマスコミ関係者の取材を受けるトシゾー店長。もちろん隣には優秀な通訳のハチさんがいる。イヤが追うにも自分がファイナリストとなった実感が、ジワジワと湧いてきたであろうトシゾー店長。
そんなトシゾー店長の姿を見ながら、私たちは送信機、受信機のバッテリーの充電、使用するタイヤやその他の準備を進める。
ファイナルレースに出場するドライバーとチームマネージャーのミーティングも終わり、いよいよ記念すべき第1回目の1:5世界選手権のファイナルレースが近づいてきた。そのレースに、日本の、いやオレたちのトシゾー店長が出場するんだ!何てすごいことなんだ!何てうれしいことなんだ!レース準備は全て整い、チームJapan全員の気を込めてボディをかぶせる。狙うはもちろん、表彰台の真ん中だ!
スタート前に行われる選手紹介のために、バックストレート中央付近に、栄光の10台の車が並べられる。スタンドには、いつのまにか1000人を超えていたであろうギャラリーが集まっている。そしてコース内には大勢のマスコミ関係者が、ファイナリストの登場を待っている。
もちろん私たちも、世界最高峰の舞台に登場するトシゾー店長の姿を、今か今かと待っていたのであった・・・。
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