SW野郎の「1:5世界選手権参戦記」

全てが終わった翌朝、そして・・・

世界選手権の日程が全て終わった朝を迎えた。昨夜のバンケットでは、全員ノーコンとなってしまったチームJapan。遅い朝食をとり、10時前に駐車場に集まる。8日間に渡って世界戦を戦った車、パーツ類を日本に送るため、梱包作業に入る。世界戦に出発する前に同じ様に梱包した時は、夢と希望と一抹の不安を抱きながら詰めたことを思い出した。

これまで張りつめていた緊張感を一気に開放したことと、二日酔いで頭がボーっとなりながらも、世界戦が終わったということが、徐々に実感として湧いてきた私であった。30分ほどで梱包作業が終わり、全員の荷物を山崎さんとさいとうさんが、FG社まで届けてくれることに。残された私たちは、1台の車に乗り込み、ハチさんの運転でエットリンゲン近郊の町に出かけた。
 
バーデンバーデンという町を散策し、イタリヤ料理屋でピザやスパゲティを食べる。思うにこれがドイツに来て、最初で最後の町での昼食だった。
歴史を感じさせる街並みを歩きながら、アイスクリームを食べたり、写真を撮ったりと、この日ばかりは、観光客になりきって、ゆったりとした気持ちになれた私たち。さあ、お土産を買おうとお店を探すも、飲食店以外は9割以上閉まっている。あとから聞いた話だが、日曜日は飲食店以外は営業してはいけない法律があるとか・・・。

それを知らない私たちは、バーデンバーデンを後にし、エットリンゲンの町へと移動する。結果は同じく、お店はどこも空いていない。のどが渇くので立ち寄ったお店はマクドナルド。月見バーガーを注文しようと思ったが、ある訳ない。氷が入っていないコーラを飲みながら、他にすることもなく、「ぼちぼち帰ろうか・・・」。

時間は17時前だったか、8日間通った道を右折し、ホテルのすぐ近くまで帰ってきた。ここで後部座席に座っていたトシゾー店長がポツリ。「サーキットに寄って帰ろうよ〜」。かなり歩き回って疲れた体が、なぜか元気になる感じを受けた私。

3分ほどでサーキットに到着する。昨日の今頃は、ファイナルレースの真っ直中!ギャラリーの歓声とエンジン音、そしてパドック内での緊急作業が走馬燈のように思い出されてくる。巨大テントの脇に車を止めると、誰もいないはずのサーキットでは、4年後に開催される世界選手権での優勝を夢見て車を走らせる少年2人と彼らのお母さん。そして面倒を見ているフラビオがそこにはいた。

もう2度と来ることのないであろう、このサーキット。でもうれしさや悔しさがいっぱい詰まったこの場所をしっかりと焼き付けておきたくて、サーキット全体を歩いて回った私。

少年が私たちの見ている前でコントロールタワーに上がり、ピットから車をコースに入れる。静寂のサーキットの中で、たった1台だけのエンジン音が響き渡る・・・。コース脇のフェンス越しに見ていた私の頬をつたう、何か冷たいものを感じた・・・。

悔しい思いをいっぱいしたけれど、世界戦に選手として参加できて、本当に私は幸せだった。何が幸せだったかって、国民性の違いはあるだろうけど、RCがモータースポーツとして確立されている、このヨーロッパで、ドライバーやピットクルーはもちろんのこと、チケットを払ってまでスタンドに入って観戦にするギャラリー。そしてIFMARは当然のことながら、レース運営を支えた地元MCエットリンゲンのスタッフたち。全てが整った環境の中で、朝から夜遅くまでRCが出来たこと。

そして、時にライバルであり、時にチームメイトとして戦ってきたチームJapanのみんなとこのすばらしい時間を共有できたこと。かけがえのない36才の夏だった・・・。
 
車に乗り込み、サーキットをあとにしようとしたとき、サーキットの片づけに来ていたスタッフのみんなが見送ってくれた。姿が見えなくなるまで車の中から手を振っている私たちがそこにいた。

「4年後、また世界戦に出たいよね!もちろん、選手として・・・」。そして言葉にならない思いを胸に抱き、サーキットを後にした私たちであった。

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